Thothの日誌

日々の活動や読んだ本について書き綴っていこうと思います

駅伝小説 読みました

瀬尾まいこ 著の『あと少し、もう少し』を読みました。

 

 

中学時代は運動部所属でもありませんでしたが、たまには中学時代を思い出したいなあと思いながら手に取りましたね。

 

この本は陸上部の桝井が駅伝に出場するためにメンバーを募り、大会に挑むものなのですが、駅伝の1区~6区までをそれぞれの走者が大会までの日々を回想し、大会本番の様子を独白していく構成になっております。ちゃんと前後の順番の走者と関係が濃くなっていていますね。

僕なりに登場人物それぞれに感じたことは…

 

1区 設楽

いじめられっ子だったらしく、粗暴で怖い大田を避けていましたが、大田からはむしろ一目置かれていたという嚙み合わなさがありましたね。

 

2区 大田

自分のできる範囲でしかやろうとしない。気づいたら自分にできることはほとんどなくなっていた。という状況は僕にも心当たりがあるので、身につまされる思いでした。今では僕も能力は(ある程度まで)伸ばせることができるとわかったので、少しは頑張れるようになったかなと思います。

 

3区 ジロー

一見、人生ハードモードに見えて意外とやっていけそうな人。彼は頼まれごとに弱く、断れない性格です。大田関連の時に「普段不良の人は少しちゃんと出席するだけで褒められるのに、まじめにやっている人は頑張っていても見向きもされない」という心情を吐露した時は不条理さを感じてしまいましたね。ですが彼の場合、自分を偽らないし、取り繕うこともないので余計なダメージは負わなさそうです。桝井とはその点で異なると感じました。部長か頼まれた助っ人かという立場の違いもありますが…

 

4区 渡部

俊介の言う通り、「キャラ設定に迷っているうちに、インチキくさい芸術家みたいになった」人だなあと初見で感じてしまいました。(笑)そんな変なことをしなくても彼の場合は周囲の心の機微を察知する能力に優れていますし、思いやりもありますし、駅伝に出場すると決めたらきちんと練習もするなどやると決めたら徹底しているので、十分魅力的だと思いました。俊介も彼だからこそ胸に抱えるものを少しのぞかせることができたのかもしれません。

 

5区 俊介

楽しい時間を共有したい人と、自分についての深い悩みを相談できる人は異なる。というのが明確に描かれていましたね。俊介にとって前者は修平で、後者は渡部だったんですね。

彼は桝井に対して尊敬を超える思いを抱くようになりました。最近ではLGBTにも寛容になってきたとはいえ、まだまだ理解を得るのは難しそうです。かわいい女の子談義や桝井の不調など俊介がその場に居づらい雰囲気の時の避難先が渡部だったというのが5区になって明かされた形になっていました。

 

6区 桝井

彼は一見爽やかに見えますが、他者と深い関係になるまで踏み込めず他者とのコミュニケーションの間に壁を挟んで接していた状態でした。また、部長という重責を感じていたり、自分の本心を偽って爽やかに見せたり、読んでいて心配になってしまう人物でした。

設楽とはお互いに距離があると感じていたり、ジローからは息が切れる練習後でも涼しい顔をしている桝井を見て「冷却装置でもついているのか」と感じたり、「何を考えているんだ?」と思われていたりしています。俊介とは先輩後輩の関係で弱みを見せられないので桝井が不調になるとよそよそしくなってしまっていました。とはいえ、集団から疎外された経験を持つとこうならざるを得ないなと感じてしまいました。

俊介は桝井の走りを参考にしているので彼自身は「自分の走りをしていない」と感じつつも、桝井からは「俊介の走りは俺の走り。だから俊介を思い浮かべれば自分の走りをすることができる」と思いながら走るシーンは二人の関係性の濃さを物語っているなと感じました。