Thothの日誌

日々の活動や読んだ本について書き綴っていこうと思います

「Your Time」を読みました

鈴木祐さんの新刊「Your Time」が発売されたので早速読んでみました。

作者はオリバー・バークマンの「限りある時間の使い方」の原著「Four thousand weeks」を読んでいた為か、影響を受けているなぁと思う所がありました。

本書はカレンダーやTODOリストのようなスケジュール管理ツールといった小手先だけの対策では足りず、現代人の時間感覚を修正する事に重きを置いているのが特徴です。

効率を上げても時間の余裕ができない

Twitterで鈴木祐さんが投稿した「Your Time」の試し読みの部分にもありましたが、巷にある時間術を突き詰めていっても以下のような問題点が起きるみたいです。

  • 一つ一つの作業時間が短くなっても総作業数が増えてしまい、時間の余裕ができない。これはどういうことかというと、郵便を用いていた時は送受信に時間がかかるので書く内容を緻密に丁寧に書いていたが、メールやLINEの普及によって時間がかからなくなると「今、ひまー?」のような送られると困るようなメールやLINEも増えてしまって返信に手間取るようになってしまった。
  • 時間を意識しすぎると目の前の作業に集中できず、かえって時間がかかってしまう。
  • 早く(何かを)終わらせることに固執してしまい、手短に片付く作業で満足してしまう。緊急度と重要度で作業を区分するのは有名だが「緊急だからとりあえず手を付ける」ということをしてしまいがち。←「単純緊急性効果」という。
  • 長期的な視点で考えられなくなる。
  • 時間や効率ばかり考えると、創造的な発想が疎外されてしまう。
  • 「時間を使いこなす」のに無理がある。

私たちの時間間隔

冒頭でも述べましたが、この本で書かれている解決策は道具を使ったものよりも私たちの状態異常を直すことに重きを置いています。その状態異常とは時間間隔の歪みです。私たちが時間を認識するとき、物事の変化を見ることで認識しているそうです。
現在の状況を見て、過去に起こったことを思うことを想起といい、未来に起こるであろうことを思うことを予期といい本書ではそれぞれ「時間想起」と「時間予期」と名付けています。

時間予期

将来のイメージが鮮明であればあるほど現代では成功しやすいですが、やりすぎると今が未来の為だけに使われる感覚に陥ってしまい、人生に楽しみが感じられなくなってしまいます。逆に薄いとギャンブルやたばこ、暴飲暴食といった刹那的で将来のことなんか一切考えないようになってしまいます。
また、予期の数が多いと焦りが起き、目先のことばかりにとらわれやすくなってしまいますし、少ないと無気力になってしまいます。
私は予期が濃く多いので「容量超過型」でした。こちらの記事でも述べた通り、やることを絞って、順番通りに取り組んでいこうと思います…。

時間想起

過去に起こったことを正確に記憶しているか、それがポジティブかネガティブかによっても時間間隔に影響を与えるそうですね。私は想起が正しいけどネガティブな「怖がり型」でした。先延ばししやすいタイプのようです…。

脱・効率化

時間予期、時間想起それぞれの対処法は対症療法に近く、本書で最も述べたい内容だと個人的に思ったのが4章の「効率化から解き放たれる」と終章の「退屈を追い求める」だと思います。
上記の通り、効率化を図ったとしても作業量が増えてしまったら総作業時間は変わらず、むしろ増えてしまいます。また、(秒刻みのような)時計が発明されてから時間の効率化という考え方が芽生えていて、それまで人々は「日が昇ったら活動して、日が沈めば寝る」のような大まかな時間間隔しか持ち合わせていなかったので時間の効率化という考え方は人類史から見れば歴史が浅いんですよね。ここから脱却するために著者は大きく二つを挙げています。

  • 文学を読む

物事の時間がかからなくなり、また分からないことがあればすぐにGoogle検索出来てしまう現代では、少しの待ち時間が待てないなど忍耐力が失われている問題があります。また、分からないこと状態に耐えられず、手軽な答えを求めてしまうようになってしまっているようです。
この分からない状態に耐える力を「認知の耐性」と呼びますが、小説がそれを鍛えてくれるそうです。小説はタイトルや表紙からではどんなお話か、どんな結末かわからい状態から物語が展開するため、それを読むことで認知の耐性が身に着くのだとか。
ちなみにネタバレなどを読んでから読む人もいるかもしれませんが(私もしたことがあります)、意外とネタバレを読んでも理解できないことが多いです。言葉でうまく説明するのが難しいのですが、「年表を読んでいる」ような感覚に陥ってしまうですよね。
結果だけを見せられても、「なぜそうなったのか」まで書いているネタバレサイトはそんなに多くない印象で、自分で作品を読んだ方が確実なことが多いです。小説は初見で飛ばし読みができないジャンルなので落ち着いて、焦らずに読む必要があるなと感じます。

  • 退屈を突き詰める

「限りある時間の使い方」でも言及がありましたが、絵画を3時間見つめ続ける、冷水に一定時間当たり続けるなどすると焦りが減るそうですね。自然な時間の流れに身を任せるしかないという感覚になり、時間が沢山ある気がしてくるそうです。…いやでも3時間はキツイかな…と思ってしまいますが。
本書でもいきなり3時間はキツイのでまずは「何も成果物が得られそうもないもの」を一つ選んで5分だけ眺めるのをおススメしています。
私だったら…小説の表紙を眺めるとかいいかもしれません。『テスカトリポカ』の深淵な表紙を眺めるとかしてみようかなと思います。絵画は場所を取るし、なるべくスマホなどの電子機器は使いたくないですしね。